いい家は発表されない

<GA 小林>

 「この家は雑誌に載った家なんですよ」
 建て主さんがちょっと誇らしげに語るシーンというのがありました。
 本に掲載されるということは・・・嬉しい?時代があったものです。

 その当時は雑誌社のほうもおごっていて、載せてあげるという態度。
 それは取材費にあらわれていました。
 建て主さんに支払われる取材費は・・・たった五千円くらい。(それさえ払わない雑誌社もあった)
 半日ほど費やして物を片付け家を撮影されるのは、建て主さんにとっても面倒くさいことだったのですが、一方では本に載ることは誇りでもあったのです。

 ところが最近は違うと思います。・・・まるで違う。
 家が本に載るというのはプラバシーの侵害に近い。外観が写る。あの家だ!と近所に分かる。間取りが分かる。しかも、建設費用まで紹介されるのだとしたら、これは抗議にもつながる大いなる迷惑だというわけです。

 あるとき、僕の事務所にはテレビ局から次のような依頼がありました。
 「二世帯住宅を設計段階から取材したい」
 「嫁と姑がその設計のなかで葛藤しながら一件の家をつくりあげ、お互いに反目するけれど・・・最後には大成功する、という感動の筋書き・・・」
 建築家は(ある番組では匠と呼ばれる)やはり自分の宣伝にもなるので、建て主にその取材の話しをするのですが・・・
 「冗談じゃない」
 「私の家は見世物じゃない」
 一笑にふされるのが今の傾向でしょう。

 僕の友人の建築家は「新建築」という建築界では有名な雑誌に住宅を載せました。載せると、また次の雑誌社の取材があって、何度かそれを繰り返しました。
 1年ほど経ったとき、建て主さんは言いました。
 「あなたには(建築家のこと)世話になったけれど、この作品?作品扱いはもういい加減にしてくれ!」

 お金持ちの建て主さんほど、以前からこの傾向は強かったと思います。本に紹介される誇りより、自分をさらけ出す迷惑、危険性です。

 そして、お金持ちの建て主さんは建築家を使っていい家を建てている傾向が強いので・・・いい家は次第に本に掲載されるということが減ってきているように思います。
 いい家はあるのだと思います。しかし、今「いい家」は雑誌社の選択眼ではなく、建て主の希望で掲載されにくくなっているのです。

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この記事へのコメント

ポチョ
2008年09月09日 19:12
記事とても参考になりました。
なるほど世には出ていない名住宅も沢山あるのですね。

http://potyomukinn.omiki.com/

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